山本直樹「世界を駆ける紀州の力」を求めて

 それは1日の夜のこと、いつものようにだらだらネットをしていた僕に衝撃が走りました。山本直樹の幻の単行本、「世界を駆ける紀州の力」が和歌山県橋本市の図書館に置いてあるというではないですか(書名で検索すると出ます)。この本に関して、森山塔名義の単行本「キはキノコのキ」の解説から引用すると…


彼のデビューが単行本であったことは意外と知られていません。もちろん名前はまだ「森山塔」ではなく「山本直樹」でした。本屋には売ってません。何しろ某政治家のプロモーション・コミックなのですから。タイトルは「世界にかける紀州の力」。1983年秋のことです。原作付で彼は作画担当。
 とあります(他の単行本でも言及していた部分があった気がしますが省略)。森山塔/塔山森名義の単行本はバージョン違いも含め全部、山本直樹名義のもほとんど持ってる僕としても、ずっと探していた本ではあったんですが、全くといってもいいくらい情報が出てこないのが現状で…。まあ、少し調べればその政治家の名前が東力(ひがし・ちから)で、和歌山出身というのは分かるんだから、この本が地元の図書館にあるというのは不思議ではないんですよね。
 で、さっそく現場へ行ってきました。新今宮駅から南海高野線快速急行橋本駅まで、所要時間は約50分で運賃は670円。車窓から見える景色はどんどん変わっていき、川を越え、トンネルを抜けて、緑が多くなるにつれて何だか不安になってきます。これで貸し出し中やったらどうしよう…というかオレこんなとこで何やってんねんやろ…。
 しかし、電車が目的の橋本駅に着いたので気を取り直して出発。駅で見た地図にしたがって国道24号に出て、狭いのにけっこう交通量の多い道を歩いていきます。徒歩10分って書いてたけど、もうちょっとあるよなあ…などとグチってる間に、それらしき建物郡が見えてきました。ちょっと分かりにくかったけど、教育文化会館という建物の5階が図書館になってるらしい。人の行き来がけっこうあって、平日の昼間にうろついてるから変に思われてないかなーなどとよけいな心配をしたり。
 

 図書館に入ってみると、思ったより狭い…。また少し心配になりながら、控えておいた分類番号「726」を元に棚を探します。しばらくして棚を発見、ドキドキしながら本を探していくと…ありません。うーわー。いやいや、ここで諦めてもしょうがないので、図書館に置いてある検索システムを使って調べてみると、どうも「726」でも郷土資料の方の棚にある様子。喜び勇んでその棚に行ってみると、ありました!

 今まで書影や版型すら分からなかった本ですが、こんな感じです。サイズはA5、カバーがないくるみ製本ってやつでしょうか。清水冨士夫・山本尚樹作画とありますが…アレ、尚樹?しかしこの本では「山本尚樹」で統一されている様子。出版元は東洋堂企画出版社で定価680円、しかし奥付には発行年月日が書かれてません。ページ数は、あー控えてない。たしか152ページだった…かな(追記:合ってました)。目次によると、プロローグ、Part1、Part2、Part3、エピローグという風に分かれてる様子。と、目次下の製作協力に「大野安之」という名前が。あの大野安之さんですよね、たぶん。
 とにかくコピーしようとコピー機を探してみると、どうもココはセルフじゃなく職員さんがコピーする手はずになってる様子。イヤな予感…はずばり的中、著作権により全部コピーするはダメ、半分以下ならいいよってんで、ちょうど区切りのいいPart1の終わりまでと、表紙、裏表紙をカラーコピーでお願いすることに。しかしこのカラーコピーが長かった。職員さんと(同じ建物にある)市役所の部署に行ってコピー、今度は出納局でお金(1枚200円!)を払い、またさっきの部署に戻って領収書を確認してもらう…という流れで、これはもうたらい回し状態。白黒コピーも1枚15円だしな。うーん。でも、市民、もしくは橋本市に通勤・通学してる人じゃないと本は借りられないし…。
 とまあ愚痴はこの辺にして、肝心の中身。少年時代のエピソードから始まり、東大から大蔵省へ、そして海外赴任を経て帰国後政治家を目指す…という流れなんですが、ページの半分くらいを占める少年時代の描写はなかなかいい感じです。ただ、後半はだいぶ書き飛ばしてるなーという印象を受けました。細かいところで、麻雀牌に小さい字で「宮内庁御用達」って書いてるんだけど、こういうネタ通しても大丈夫なんだろうか…。
 ラストは妻と3人の子どもを連れて帰省する車内でのシーン。最後のコマを俯瞰で決めるのは今に通じるところがあるなぁ…って、「返却期限票」がべったり貼られてるよ!しかも誰も借りた跡がねぇ…という落ちがついてこのレポも終了。

●参考リンク
http://www.city.hashimoto.wakayama.jp/board_of_education/library/index.html
 今回お世話になった、橋本市図書館のホームページ。…なんだけど、和歌山県立図書館和歌山市民図書館田辺市立図書館にもこの本が置いてあるようです。つまり、また行って後半コピーして来いってことですか…。